(特別企画コラム) ニームのアレロケミカルズとアレロパシー
■ ヒガン花が咲いていた
昔は、田圃の畦には必ずヒガンバナが咲いていました。
ヒガンバナを植えると不思議にネズミやモグラが来ないのです。
田圃に、緑肥、イナワラ、モミガラ、フスマを施用すると雑草が少なくなります。レンゲやクローバーも同じです。どこの田圃にもレンゲの花が咲いていたのはそのためだったのです。
混植といわれる栽培法があります。ネギ属とトマト、キュウリ、スイカなどを混植すると病気が発生しないのです。長い農業の経験から得た知識でした。
■ アレロバシーとアレロケミカルズ
これら不思議な現象もやがて科学的に解明されていきました。
その植物がもっている天然の物質が体外に放出され、これが他の植物や昆虫、微生物、小動物、人間などになんらかの影響を及ぼす現象を「アレロパシー」(他感作用)といいます。また、この天然の物質を「アレロケミカルズ」(他感物質)といいます。
植物は、自己防衛本能のために、このような物質を生産しているのです。とくにその作用が著しいといわれているのが、除虫菊、タバコの葉、ワサビ、カラシ、ニンニク、ハッカ、ヨモギ、クローバーなどです。
農家の方々は、アレロパシーなどということは知らなくとも、経験的にその作用を知り、これを農業に活かしてきました。だが、科学者はその謎を科学的に解明しました。そしてこれを「農薬」の誕生に結びつけたのです。植物のアレロケミカルズこそ農薬の原点だったわけです。
■ ニームのアレロバシーとアレロケミカルズ
それでは、ニームのアレロケミカルズ(他感物質)とアレロパシー(他感作用)について、もう少し詳しく触れてみましょう。
ニームのアレロケミカルズを形成する活性成分は「アザチラクチン」といわれます。コーヒー豆や茶の葉の活性成分がカフェインやタンニン、タバコの葉がニコチンであるのと同じです。
田圃に緑肥、イナワラ、モミガラ、フスマを施用すると雑草の発生を抑制するのもアレロパシーの効果であることがわかっています。
このアザチラクチンの作用がもたらす作用が科学的に解明されるとともに、ニームは、天然対策資材として一躍脚光を浴びることとなりました。
◇ニームのアレロケミカルズがもたらす効果◇
1.無毒性、生分解性だから環境にやさしい。
2.神経毒作用ではなく忌避・摂食障害をおこす。
3.産卵、孵化を阻害する。
4.益虫を殺さないので、天敵が残る。
5.耐性がつかない。
このニームの特徴が判明すると同時に、農業先進国ではただちにこれを農業にとりいれることとなりました。ニームの実を絞って製造したニームオイルは葉面散布剤として、その絞りカスであるニームケーキを土壌散布剤として活用したのです。そして予測通りの効果が得られ、いまでは欧米農業先進国では、対策資材の主流となっています。
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